大塚英志 - サブカルチャー反戦論

サブカルチャー反戦論 (角川文庫)
わたしなりに咀嚼してまとめてしまうと、

  • 戦争反対を声高に言えない空気があるが、それを黙ってやり過ごすのは間違っている。
  • 9.11をハリウッド映画のようだと思ったことに対して、なぜそう思ったのかを考えよう。現実を映画の世界に近付けてはいないだろうか。
  • 「自衛」を根拠にして武器を持ちあるいは弱者に向けてはいないだろうか。民主主義は自分自身や自分の味方だけを守るものではない。

の3点に。
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また過去・現在の(戦時下)の書物や映像作品を例えに、製作者が意図したかしていないかによらず、戦争と繋がっていることについても言っています。
で、その一例として『海辺のカフカ』が結構なページで語られていることに対して、わたしは驚くのでした。「スニーカー文庫のような小説」も現実の戦争に少なからず繋がっているという書き口*1は、角川:大塚:反戦という文脈で100%期待していた文章だったけど、唐突に予期しなかった村上春樹を引き合いに出されて、おたくのひと達と同じ感覚を覚えたのは良い経験でした。*2
google:デタッチメントからコミットメントへ:54件
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読んでみての肝腎のわたしの意見ですが、

  • 反戦を唱えるのにどうしてこんなに責任が重くのしかかるのか。普通逆じゃないのか。

の1点です。
少し遠い地方の、またとても近い未来の戦争についてたまに考えるのはいいけど、ずっと深く考えると自分だけが特別(に無力感でいっぱい)な人間みたいな気分がして、調子に乗ります。それはとても気持ちがいいけどとてもエネルギーを使うので、そのうち考えるのをやめた。
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そんなオトナゆえのブレーキを感じてしまう1冊でした。続く。

*1:「1.3 キャラクター小説はいかに戦争を語ればいいのか」の項

*2:いまも昔も元○○ヲタみたいな態度で、傍観者的アカデミズムに逃げることをわたしは隠しません。弱い、要するに影はもっと深いところに存在する。